不知行方

学生のころ、バイトしていたお店に、とっくんというひとがいた。


奄美大島出身の彼の周りには、不思議な風が吹いていて、
時折、暴言を吐いたり、怪奇なこともあったけれど、憎めないひと。
わたしが卒業と同時にそのバイトを辞めて、
次にとっくんに会ったのは、その夏、四条河原町の阪急前。
信号待ちをしていたら、黒服のキャッチのお兄さんが寄ってきて、
「まぁーーちゃん?」という。
それが、とっくん。
留年した大学も辞めてしまったらしい彼は、
祇園のお店の客引きになっていた。


その時は、少し立ち話をし、
連絡先は変わってないからまた京都きたら連絡して!といって別れた。
次の年の夏に遊びにいった時に、お茶しようぜーってことになって、
アイスコーヒー飲みながらわたしはダメ出しされまくった。
何のことだったかは、あまり覚えていない。


それから、しばらくして、音信不通。
バイトのともだちにきいても、誰も知らなくて、
結局、今、どこで何してるか知らない。


今まで、完全に音信不通になったともだちって、彼ひとり。
奄美に帰ったのか、お水の世界にいるのか、、、
わからないから、余計に知りたくなるもので、
ここ四年程、いつも気になる男性というと、
とっくんかもしれない。
意味が違うかもしれませぬが。


多分、きょうは、
わたしが京都を去る時、
ポーターの財布を買ったときのオレンジ色の袋に、
ホットペッパーのおまけと、
皮肉なサザエさんのパロディー漫画と、
高校生の時にできたいもうとの写真と、
一枚のCDを入れてくれたとっくんの誕生日、だったと思う。


どこで28歳を迎えているのかぴばら。
わたしの死ぬまでに会いたいひと第一位、とっくん。